投資入門
貯蓄と投資
貯蓄と投資は実は全く異なった役割と目的を持っています。まずは貯蓄と投資の違いを確認してみましょう。
貯蓄
郵便貯金や銀行預金などで安全にお金を貯めることです(元本の保証のないものもあります)。 通常、得られるリターン(収益率)は低いですが、簡単にお金を引き出せる点が長所です。
投資
退職後の生活資金確保など長期の目標のため、より高いリターンを得ることを目的に株式や債券などのリスク資産に投資することです。
貯蓄 | 投資 | |
目的 | 短期の支出や緊急事態の出費に備えるため | 将来のこどもの教育資金や老後の生活のため、長期的な資産価値の増加を目指す。 |
資産の種類 | 銀行預金・郵便貯金 MRF・MMFなどの短期金融商品 |
株式 債券 投資信託など |
リスク | 原則なし (元本保証のあるものに関して) |
保有する証券によりリスクの度合いは異なる |
リターンの源泉 | 預けた資金につく利子 | 保有証券からの利子、配当、分配金や値上がり益(保有する証券によって異なる) |
長所 | 安全 出し入れが簡単 |
市場での証券の価値が下がれば損失が出る |
インフレの影響
一般的にインフレに対抗する有効な手段は株式投資と言われています。貯蓄の一部を株式投資にまわすことがインフレに対抗する手段として重要になります。
インフレ(物やサービスの価格が上がり続けること)になるとお金の力、いわゆる購買力はじわじわと落ちていきます。例えばインフレ率が今後20年の間に年平均3.5%で推移したとすると、下に示すように消費者物価はほぼ2倍になります。
今日の値段 | 20年後 (平均インフレ率年3.5%) |
20年後 (平均インフレ率年4.5%) |
|
お弁当 | 500円 | 995円 | 1,206円 |
映画券 | 1,800円 | 3,582円 | 4,341円 |
航空券 | 50,000円 | 99,489円 | 120,586円 |
※数字はあくまで仮定であり、実際のものとは異なります。
複利の効果
「お金がお金を生む」、複利の仕組みと効果についてご説明します。
インフレが続くと、保有している資産の価値は徐々に目減りする可能性があります。そこで、資産を長期で運用し、更に複利の効果を利用することがインフレリスクの対抗策となります。
投資した資金からは毎年利子や配当、キャピタルゲイン(値上がり益)を得られる可能性があります。ここで得た利益を再投資すると、更に利益が得られます。この更なる利益も再投資されることで、ますます新たな利益を得ることができます。「お金がお金を生む」ようになるのです。このような仕組みを複利といいます。
例
65歳のA子さんとB男さんの例を考えてみましょう。
2人は定年後のため、毎年5%のリターンが得られる金融商品に年100万円ずつ投資し、利益は毎年再投資されるとします。投資開始年齢と投資期間、そして総投資額にご注目ください。
投資開始年齢 | 投資期間 | 年間投資額 | 総投資額 | 65歳時受け取り額 | |
A子さん | 30歳 | 10年 | 100万円 | 1,000万円 | 4,472万円 |
B男さん | 45歳 | 20年 | 100万円 | 2,000万円 | 3,472万円 |
A子さんの投資期間はB男さんより10年短く、投入した資金は1,000万円少ないですが、A子さんはB男さんよりも1,000万円も多く貯めることができたのです。これは、A子さんが15年早く投資を始めていたからです。
※この例はあくまで説明のためのものであり、実際の収益とは異なります。
1年でリターンが5%のものが複利のマジックにかかると・・・30年後の累積リターンは、なんと332%にもなります。
資金を貯めるには?
長期投資は将来のインフレに対して最も効果的な手段ですが、まずは元手となる資金が必要です。
給料などの収入が入ったらまず、そのために残しておく金額を最初に決めておくことが大切です。
みなさんも家賃を支払って、クレジットカードの請求が引き落とされたら給料がほとんど残っていなかったという経験があるのではないでしょうか。投資資金を確保するためには、収入から自動的かつ継続的に振り分けられる方法を選ぶことがもっとも効果的です。下にいくつかの具体的な例をご紹介します。
給料天引き
各金融機関や財形貯蓄制度、確定拠出年金制度などを通じて、給料が自動的に天引きされるサービスを利用しましょう。実際に見ていないお金を初めからなかったものと思えば、無理せず自然に貯めることができます。
自動振り替え
銀行、証券会社などの金融機関では、申し込みをすれば普通口座から定期預金などの貯蓄口座へ自動的に資金を振り替えてくれます。投資信託などの投資口座に資金を振り替えることもできます。この仕組みを利用すれば知らず知らずのうちに投資資金が貯まっていきます。
昇給分を使わない
昇給分を自分の財布に入れる前に、直接、貯蓄口座や投資口座に振り替えます。生活レベルを上げずに昇給分を投資資金にまわしてください。
臨時収入やボーナスの一部を貯める
ボーナスの一部や、確定申告で戻ってきた税金分を投資資金にまわします。臨時収入があると気が大きくなってすぐ使ってしまいがちです。でもそのお金を投資に回せば、確実に資金を増やすことができるのです。
代表的な投資資産の種類
主な3つの資産とそれぞれの長所・短所をご紹介します。
もし既に投資をはじめている方ならば、そのポートフォリオ(※)は主に、1.現金・預金や短期金融商品などの流動性の高い資産、2.株式、3.債券の三種類で構成されているのではないでしょうか。
1.短期金融商品(円建てMMF、MRF、定期預金など)
長所
短期金融商品は簡単に引き出すことができます。また手数料や途中解約に対する違約金がほとんど、もしくは全くかかりません。一般的に価格は安定しており、多少の利子が得られます。(MMFなど元本の保証のないものもあります)
短所
安全性が高いため支払われる利子が低く、長期的にはインフレ率をわずかに上回る程度です。長期投資を考えている場合は、これらの短期金融商品をポートフォリオの柱にしないほうが良いでしょう。
2.株式(上場・公開企業における共同所有権もしくは持分を表すもの)
長所
株式を持っている企業の業績が上がれば、その利益の一部を配当として受け取ることができます。また株価の上昇からも利益を得ることもできます。 長期的には株式はこれら3つの資産クラスの中で最も高いリターンが期待できます。インフレに対して最も有効な対抗手段と言えるでしょう。
短所
株式市場は価格が激しく変動することがあり、場合によっては大きく下落する可能性もあります。また、株式を発行している企業が固有の問題を抱えている場合は、その株式の価値が減少する可能性もあります。株式は3つの資産クラスの中では一番リスクが高いものと言えます。
3.債券
債券の多くは、その債券の発行者が特定の日(満期日)に借入金を返済し、それまでの間、定期的に利子(クーポン)の支払いを行なうことを約束しています。このため、債券はしばしば"フィックスト・インカム"(確定利付き投資)と呼ばれます。
長所
長期的に見ると、債券は短期金融商品よりも多少高いリターンが期待できます。 短期金融商品と比べると債券の方がインフレに強いということになります。
短所
満期日までの期間が長いほど、債券の価格は金利の変動の影響を受けやすくなります。このような価格変動があるため、債券は短期金融商品よりもリスクが高いと考えられます。
※ポートフォリオ:個々の投資家が保有している複数の金融資産または証券の集合体
投資信託について
投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を、運用のプロのファンド・マネージャーが短期金融商品、債券、株式のうち1つ、もしくはそれらを組み合わせたものに投資することを言います。投資信託の価額が上昇すれば、自分の持分に応じて利益を得ることができますし、もし下落すればその損失を同様に負担することになります。
投資信託の様々な種類を以下にご紹介します。
投資信託の選び方
- 目的から選ぶ
- 円建てMMFや中期国債ファンドは利回りが変動する可能性はありますが、投資元本が割れにくいという長所があります。公社債ファンドはインカムゲイン(※)を重視 します。株式ファンドは株式配当収入と、市場価格の上昇(キャピタルゲイン)に重きを置いています。バランス型ファンドは上記のファンドの目的を組み合わせたものになります。
- スタイルから選ぶ
- 公社債ファンドは、投資対象である公社債の満期時期と格付けにより運用スタイルが異なります。株式ファンドは、投資先の企業規模、成長性(グロース株投資)や株価の割安度(バリュー株投資)などから選ぶ運用スタイルなどがあります。
- 戦略から選ぶ
- インデックス運用(パッシブ運用とも言います)とは、市場の動きを表す指標(インデックス)にファンドを連動させることを目指すもので、市場の動き以外のリスクをとらない運用戦略です。一方、アクティブ運用とは、市場平均を上回る投資成果を目指します。魅力的な証券を市場から見つけ出すための広範な分析と予測を行なう分、調査コストなどがかかり、アクティブ・ファンドの運用コストは、インデックス・ファンドと比較して高くなる傾向にあります。
投資信託の長所
- 分散投資
- 多くの証券に幅広く投資をするため、個別の証券の値下がりによって大きな損失が発生するリスクをある程度減少させることができます。
- 専門家による運用
- 経験豊富なファンド・マネージャーがファンドの運用目標に沿って一貫した運用を行ないます。
- 流動性
- 簡単に売却が可能です。ただし、一定期間売却できない決まりがあるものや、解約手数料を徴収するものもあります。
- 利便性
- 証券会社や投資信託販売会社のホームページや電話で、いつでも売買や情報収集を行うことができます。
投資信託の短所
- 元本保証がない
- 預貯金とは違い、運用利回りはあらかじめ確定していません。またMMF、中期国債ファンドなどを含む公社債ファンドや株式ファンドは銀行預金と違って元本割れの可能性があります。
- 短期で大きなリターンは狙えない
- 幅広い証券に分散投資されているため、個別証券の価格が大幅に上昇した時に得られる利益は期待できません。
- 保有コストに注意
- 購入時に徴収される手数料や年間の運用管理コストが高いほど、投資成果にマイナスの影響を与えます。
※ 利子や配当による収益
その他の投資資産
投資資産というと、債券、株式または、それらを組み入れた投資信託をまずイメージしますが、他にもいくつかの対象資産が存在します。
不動産
最も一般的な不動産投資のひとつは家を持つことです。
長所
- インフレ期においては資産価値が上昇する(デフレ期には下落する可能性がある)。
- 「投資」している間はそこに住むことができる。
- 住宅ローン減税を受けられる場合がある。
- 小額の資金(頭金)で、それよりも価値があるものを所有することができる。(レバレッジ効果)
例:800万円の頭金と3,200万円の借入れを利用して4,000万円の家を買ったとします。そして、家の価値が数年で4,200万円に上昇したとすると、800万円の投資に対して200万円の利益が得られたことになります。(正確な利益は住宅ローンの支払いとその他の費用を差し引いたものになります。)
短所
- 資産価値が下落する可能性がある。
- 売却するのに手間がかかり、買い手を見つけるまでは資金を回収できない。
不動産に投資するもうひとつの方法としては、住宅用もしくは商業用の賃貸物件に投資することが挙げられます。また実際に不動産を購入しなくても、不動産ファンド(REIT)や不動産投資会社の株に投資している投資信託を購入することによって不動産に投資をすることもできます。不動産ファンドは個々の不動産や不動産投資会社に投資するよりはリスクが少ないかもしれませんが、業種別の株式ファンドとまったく同じリスクを持っています。
コレクション
長所
芸術品や骨董品、切手やコインなどの収集品を所有し、それらをコレクションする 「喜び」がある。
短所
仮に非常に価値のある収集品を持っていたとして、その評価を現金という形にするためには買い手を見つけなくてはならず、流動性の低い投資対象といえる。
貴金属
長所
- 金や銀、プラチナといったものは、限られた量しか供給されず、常に需要があるため、いつの時代も高価なものである。
- 貴金属の価格は生活費の上昇と比例して上がるため、多くの人々が貴金属はインフレに対抗する有効な手段である。
短所
- 金属の価格は非常に大きく変動し、株式や債券と違い、地金に投資しても配当はない。
- 貴金属はインフレに対抗する有効な手段だが、将来にわたってもインフレと貴金属の価格が相関しているとは限らない。実際に購入しなくても、貴金属を発掘、もしくは加工する企業の株式に投資するか、このような株式に投資する投資信託を購入することにより貴金属に対して投資をすることができます。最近では金価格連動型の上場投資信託(ETF)もあります。 ただし、貴金属の投資信託も業種別株式ファンドとまったく同じリスクをもっています。
リスクを知りましょう
全ての投資戦略において、リスクとリターン(投資収益)の「トレードオフの関係」が存在します。
一方を取ると他方を犠牲にせざるを得ないこの「トレードオフの関係」は、投資をおこなうときにとても重要なポイントとなります。
より高い投資収益を得るためには、より高いリスクを受け入れなければいけません。リスクを最小に抑えたいと思ったら、低いリターンで満足するしかないのです。また投資をはじめたら、すべてのリスクを取り除くことはできません。
3つの主要な資産間でのリスクの大きさは以下のような順番になります。
短期金融商品はリターンが最も低く、株式は最も高いリターンが期待できます。 はじめは、ほとんどリスクがないような投資商品を選んで、なるべく元本が減らないようにしたいと思うかもしれません。しかし、長期投資を目的とする場合は、インフレによって資産の実質価値が目減りしてしまうという将来のリスクを小さくするために、目先の価格変動リスクを受け入れるべきです。
もし老後の生活資金等のために長期投資を考えているのであれば、債券や短期金融商品よりも過去に高いリターンをもたらしてきた株式を資産配分の中心に据えるべきでしょう。
投資リスクの種類
投資をおこなう際には、投資の様々なリスクについて理解する必要があります。
- インフレリスク
- 生活費の上昇により、資産のインフレ調整後の実質価値が目減りしてしまう可能性。
- マーケット(市場)リスク
- 短期もしくは長期的に、株式や債券市場全体の価格が下落する可能性。株式や債券市場は、価格が上昇する期間と下落する期間が周期的に現れる傾向があります。
- 元本リスク
- 投資対象資産の価値下落により、投資金額が元本割れをするかもしれない可能性。
- コールリスク
- 債券投資において、金利水準の低下にともない、高利回りの債券を発行者が満期日前に償還する―すなわちコール(償還)するという事態が起きる可能性。
- 信用リスク
- 債券発行者が、期日どおりに利子と元金を支払えなくなる可能性。デフォルトリスクとも呼ばれています。
- インカムリスク
- 債券市場全般の利子率低下の結果、債券投資などによる利息収入が減ってしまう可能性。
- 金利リスク
- 金利上昇の為に、債券の市場価値が低下する可能性。
- 通貨リスク
- 自国通貨が外国通貨に対して強くなってしまったために、外貨建て投資の自国通貨換算での収益が目減りしてしまうという可能性。為替リスクとも呼ばれます。
- カントリー(国)リスク
- 政治的出来事(戦争、総選挙)、財政的問題(インフレ、政府の債務不履行)、天災(地震、凶作)などが、国の経済力を弱め、その国に対する投資額の縮小を引き起こす可能性。
- 産業リスク
- ある産業全体に及ぶ出来事により、関連する企業の株価が大きく上下する可能性。
- マネージャー・リスク
- アクティブ運用の株式ファンドや債券ファンドのファンド・マネージャーが、投資戦略を想定通りに実行できず、期待されていた運用目標が達成されない可能性。
ドルコスト平均法
「債券や株式の価格は常に変動するものである」
これはウォールストリートの唯一にして共通の認識です。
この認識を用いた投資手法としてドルコスト平均法があります。
やり方は簡単で、定期的に同じ金額の投資をおこなうだけです。 常に一定額を継続投資するということは証券価格が低いときにより多くの数量が購入でき、価格が高いときにはそのぶんだけ購入できる数量は少なくなります。その結果、証券1単位あたりに支払った平均コストは、その証券の平均市場価格よりも低くなります。
買い時が分からない投資の初心者はもちろん、投資の経験者にとっても、有効な投資手法になると思います。投資のプロフェッショナルであるファンド・マネージャーの多くもこの手法を取り入れていることからもその有効性がお分かりいただけると思います。 ドルコスト平均法の利用によって、債券や株式を購入するときの平均購入代金を低く抑え、時間の経過とともに市場の変動を自分の味方につけることができます。
例
基準価格が10,000円→5,000円→15,000円と推移した投資信託があったとします。
投資信託基準価格 | ¥10,000 | ¥5,000 | ¥15,000 | 購入口数 | 総投資額 | |
Aさん | 1万円分ドルコスト平均買い | 1 | 2 | 0.67 | 3.67 | 3万円 |
Bさん | 口数買い | 1 | 1 | 1 | 3 | 3万円 |
Aさんは毎月1万円ずつ購入し、Bさんは1万口ずつ購入しました。3ヵ月後、Aさんは3.67万口保有していました。
一方Bさんは3万口でした。二人とも投資した金額は3万円です。
長所
投資リスクの減少
この手法を使えば、割高な時に一度に多くの資産をつぎ込んでしまったというような事態に陥ることを避けることができます。過去の例では、1973年の初めの時点で米国株式市場に1万ドルを投資していたとすると、1974年の終わりには投資元本は6,270ドルにまで下がってしまったことになります。約37%の損失です。 そしてここから元本を回復させるにはその後2年も待たなくてはなりませんでした。1度に全部投資してしまうと、大きな損失を被るリスクを負うことになります。
定期的な投資
ドルコスト平均法は特に長期の投資に向いています。定期的に一定の投資を長く続けるほど、より幅広い価格で証券を購入することができるからです。
短所
ドルコスト平均法は利益を約束するものでも、市場の下落時に損失を防いでくれるものでもありません。
分散投資の効果
投資資金をいくつかの投資先に分散することで、リスクを軽減させることができます。
イギリスには"Don't put all your eggs in one basket"(全てのたまごを同じ籠(かご)に入れてはいけません)ということわざがあります。分散投資も同じ考えで、投資資金を複数の金融資産に振り分けることによって、投資リスクを分散させることです。1つの金融資産への投資がうまく行かなかったとしても、ポートフォリオ全体で考えた時には変動幅が少なくなり、その影響を小さくすることができるのです。
分散投資は次のような簡単な理論に基づいています。
株式、債券、不動産、貴金属などの投資対象の価格は同じ動きをしない傾向があります。ある投資対象の価格が上昇しているときに、別の投資対象は下落していることがあるということです。一般的に、株式と債券は反対の動きをすると言われていることからもお分かり頂けるでしょう。複数の証券に投資するときでも、ある証券の価格が下落しているときに、別の証券の価格が上昇しているという現象がおこります。 そしてそれぞれの証券の動きから生じる利益と損失は相殺し合うことになります。 最終的には、ポートフォリオ全体の運用成果は、1つの証券もしくは1種類の証券に投資している場合よりも安定してきます。つまり、リターンの変動幅が小さくなるのです。十分に分散投資されたポートフォリオは、あるリスクの大きさに対して、より高いリターンをもたらすと考えられます。
分散投資のやり方
ポートフォリオ案
- 短期金融商品、債券、株式の主要な資産クラスを全て保有する。
- 更に不動産や貴金属に投資することによって、より分散をはかることができます。
- 主要な資産クラスの中でも、経済の状況に応じて相反する動きをするようなタイプのものを選ぶ。(中期債と長期債、成長株 と割安株 、株式と債券など)
- 国内資産と外国資産の両方を持つ。
- 個別の証券をバラバラに購入するのではなく、投資信託を購入する。
- 投資信託は、投資家の資金を集めて、ひとつもしくは複数の資産クラスに属する複数の証券へ幅広く投資しています。
注意事項
分散投資をしてもマーケット(市場)リスク(株式や債券全体の価格が短期もしくは長期にわたって下落する可能性)を取り除くことはできません。分散投資をすると市場が下向きのとき、ポートフォリオの下落幅は市場に対して小さくなる可能性がありますが、同時に市場が上向きの時もポートフォリオの上昇幅も小さくなるということも注意してください。
現実的な投資収益率とは
自分の収益目標を設定する為にも、まずは過去の実績をひも解いてみましょう。
過去の実績は将来のリターンを保証するものではありませんが、一定の指標としては役立ちます。
次の表は、米国における過去1926年から1998年の間の代表的な資産クラスの年平均リターン実績を示したものです。
年平均の総リターン:1926~1998年(USドルベース)
短期金融商品(米国財務省短期証券) | 3.9% |
債券(米国の長期社債) | 5.7% |
株式 (スタンダード・アンド・プアース500株価指数) | 11.2% |
バンガード・グループ調べ *Standard & Poor's_500複合株価指数は、マグロウヒル・カンパニーズ・インクの商標です。(上記の数字は、各資産クラスの代表的なものであり、特定の投資リターンはこの数字と大きく異なる可能性があります。また、将来のリターンは、この数字から乖離する可能性があります。)
この年平均リターンは長期的な投資結果を示していますが、この数字から年ごとのボラティリティは見えてきません。 ボラティリティとはリターンの変動率、つまりブレ幅のことで、株式投資の中心的なリスクです。たとえば、この期間における株式市場の毎年のリターンは、一番結果の悪かった1931年の-43.1%から一番よかった1933年の54.2%の間に分布しています。
ボラティリティを完全に取り除くことはできませんが、投資期間が長くなれば、その間に起こる短期的な価格変動による影響度は、下の図のようにだんだん小さくなっていく傾向にあります。 また一般的には、債券の価格は株式の価格よりも変動率が緩やかで、インカム収入によってその一部が相殺されます。短期金融商品は、価格を一定に保つことを第一の目的にしているので、当然ボラティリティは小さくなります。
マーケット(市場)・タイミング
「安く買って高く売る」ことは可能でしょうか?
「安く買って高く売る」
市場の安い時に一度に多額の投資を行い、高くなった時に一気に売り払えばリターンは最大化します。これをマーケット(市場)・タイミングと言います。
でもいざ投資をしようとした時、「今は価格が天井なのではないか、近いうちに価格が下落するのではないか」という不安から、投資をためらった経験をお持ちではないでしょうか。いつ、どのくらいの幅で市場が上昇、または下落するかということを常に的確に予想できる経済学者や金融の専門家はいません。その専門家でも難しい予測を一般の投資家が長期にわたって当て続けることは至難の技です。
多くの投資家は価格が上昇した後に市場に飛びついて高値掴みしたり、価格が下落した際、パニックになって狼狽売りをしたりと、市場が混乱する原因となるのです。
「成功確率1.2%」
株式や債券市場の大幅な上昇は突然起こります。 ミシガン大学の研究によると、1963年から1993年の30年間における米国株式市場の上昇幅のうちその95%が、取引のあったすべて日のなかで最も値上がりした1.2%の日に集中しているのです。つまり投資の利益のほとんどが100日のうちたった1. 2日に集約されているということです。これは、長い期間のなかで、少しの間でも市場から目を離すと、投資家のリターンを著しく損なわせる可能性があるということを意味しています。 マーケット・タイミング戦略をとっている投資家は、このような「突然起こる市場の上昇を逃してしまうかもしれない」という高いリスクを負っているのです。
なぜコストが重要か
低コストで投資することが、高いリターン獲得への重要なポイントになります。
投資のリスクやリターンは予想できませんし、市場は自分の意思ではどうにもなりません。
唯一自分でコントロールできるのが「コスト」です。
コスト(手数料と費用)について、それぞれ条件の違う3つのファンド(投資信託)を比較し、投資収益に与える影響について確認してみましょう。 手持ちの100万円をファンドA・B・Cに20年間投資した結果を表にしました。(わかりやすくするため、分配金や、費用にかかる税金は考慮しておりません。)ここでは年8%のリターンが得られると仮定しています。
コスト | ファンド A | ファンド B | ファンド C |
販売手数料(購入時のみ)※1 | なし | なし | 3.0% |
信託報酬(年)※2 | 0.8% | 1.5% | 2.0% |
20年後の評価 | 3,977,969円 | 3,465,947円 | 3,048,326円 |
※1 販売手数料:ファンド(投資信託)を購入する際に販売会社に支払われる手数料です。この手数料が差し引かれた金額が実際のファンドの購入金額になります。
※2 信託報酬:ファンドを保有している間毎日一定割合でファンドから控除されるものです。内訳は投信会社の運用に対する報酬、受託銀行の管理・保管に対する報酬、販売会社の代行業務に対する報酬等となっています。
コストの影響は決して小さくはありません。販売手数料や信託報酬などのコストが高いと、最終的な投資収益は目減りしますので、低コストはファンド選びの重要なポイントとなります。購入時の販売手数料が無料(ノーロード)でも、信託報酬が高めに設定されているものもありますので、投資信託を購入される際は信託報酬にも注意を払ってください。
※この例はあくまで解説のためのものであり、いかなる特定の投資について示すものではありません。