バンガードのグローバル・チーフ・エコノミストはインフレリスクの可能性を察知

22 December 2017 | マーケット・経済

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ジョー・デイビス来年、市場を驚かせボラティリティを高めるようなリスクが近づいていると感じますか?

私たちが注意深く観察しているのは、賃金上昇に伴うインフレです。金融市場ではこの可能性はほぼ織り込まれていません。というのは、米国の失業率は数年前に、完全雇用とも呼べるほど低下しており、それでも賃金の上昇圧力はまだデータに現れていないからです。しかし、私たちの分析によれば、需要と供給の原則は賃金についてまだ通用すると示唆されています。オートメーション化とグローバルな競争により、失業率が賃金に圧力を加え始める影響力は下がっていますが、この原則はまだ通用します。


こういった変化を考慮した上で、今後6か月間で失業率が4%未満に落ちる可能性が高いことを鑑みると、2018年には賃金は緩やかな上昇を見せるかもしれません。そしてインフレを小幅ながら押し上げるでしょう。そして、たとえ小幅な上昇であっても、市場を驚かせることでしょう。なぜなら、これは現時点で織り込まれていない動きだからです。

不透明感は強いものの、金融市場のボラティリティは、過去と比べずっと低い水準にとどまっています。このような状況下、投資家は、いくつもの疑問を抱え続けています。たとえば、世界的な金利水準、国際取引、英国の欧州連合からの離脱、中国の信用拡大などです。低ボラティリティは、この先も続くのでしょうか?

バンガードによる2018年の経済および市場見通しやこれまでの記事で、グローバル化、技術革新、人口動態という3つの構造が与える影響力を詳細に分析してきました。これらの分析が、控えめな成長、低迷するインフレ、低金利という私たちの長期的見通しにつながっています。この見方に同意した投資家は多いことでしょう。しかしこれまでの低ボラティリティを根拠に、長期見通しが短期的な傾向と一致すると投資家が期待するのではないかと私は懸念しています。長期的な見通しと短期的な見通しは、異なることがあります。予想が上にも下にも裏切られることが通常であるにもかかわらず、来年の市場予想はブレ幅の狭いものとなっています。

米国連邦準備銀行(FRB)の政策決定を行う公開市場委員会(FOMC)は来週、会合を開く予定をしています。2017年内で3度目の金利引き上げを行うと思いますか?

*この記内容は、2017年12月8日時点のものです。

はい、そう思います。それは私たちにとって予想外のことではありません。昨年のこの時期に私たちは、FRBが2017年内に数回、金利を引き上げると予測していました。私たちはまた、FRBはバランスシートの縮小を早め、先ほど述べたような3つの構造を意識して長期金利は低く抑えるだろうと予測していました。

これらの予想は正しかったと思っていますが、私たちはまたFRBは金利の引き上げを2018年まで見合わせるかもしれないとも言ってきました。しかし失業率がコンセンサスよりも低かった私たちの予想よりもさらに低いレベルまで低下しています。実際のところ、世界のほとんどの場所で完全雇用に近いと言ってもいいほどです。

なので、インフレに対する不安が生じれば、FRBもその他の国の中央銀行ももっと積極的に金融政策の引き締めに乗り出すのではないかと見ています。世界的に短期金利の引き上げが行われていない理由は、インフレが不思議と欠如しているからという点に収れんします。とは言え、インフレは小幅なものにとどまり、特に長期金利は過去水準と比べても低いものにとどまると私たちは予想しています。ベンチマークとなる米国10年債利回りは、2018年は2.5%前後にとどまるでしょう。

今年初め、株式バリュエーションは高値で始まり、その後も高値を更新しています。これからはどうなると予想していますか?

従来のバリュエーションの値と比べると、足元の水準は異常に高くなっています。低金利と小幅なインフレという現在の状況下で過去平均と比較することは誤解を招くかもしれないと私たちは論議してきました。しかしそれでも、米国株のバリュエーションは、過大評価の域にまで達しようとしています。

そのため私たちは、今後5年間の米国株からのリターンは低下し、リスクは上昇すると予想しています。米国以外の株は、バリュエーションがそれほど高騰していないため上昇が見込まれていることに注目すべきでしょう。つまり、米国の投資家にとって国際的な分散化が好ましいのではないかと考えています。

株式リターンの低迷、債券の低利回り、ボラティリティの上昇となると投資家にとってあまり明るい見通しではなさそうです。リターンの予測として、妥当な線はどのあたりでしょうか?

今後5年の米国株式市場のリターンは、一桁台半ばと予想しています。過去、特にここ9年間、リターンはそれよりもずっと高い水準で推移していました。米国債券の利回りは、ここ数十年にわたりじりじりと低下しており、そのためもちろん値段は上がっていますが、将来のリターンは制限されています。

つまり、株と債券の両方について、現在は期待収益の低い状況にあると認識することが大事です。

では投資家はどうすればいいでしょうか? ポートフォリオのパフォーマンスを上げるために過大なリスクを取るよりも、自分で管理できる手段を活用するほうがいいでしょう。特に、貯蓄に回す資金を増やし、消費を減らし、投資コストを減らすことを考えるといいかもしれません。こういった手段のほか、長期的な展望を見失わないこと、手堅い方策を維持すること、時折ポートフォリオのバランスを見直すことなども、高リターンを見込める環境下と比較し、より重要になってくるでしょう。

私の同僚フラン・キニリーが好んで言うように、投資は投資家と市場のパートナーシップです。世界金融危機の終結以降、投資の成果に対し、市場がほとんどの仕事をやってきました。今度は投資家の私たちの番です。


 

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