上場企業数はなぜ減っているのか?

22 March 2018 | マーケット・経済

 印刷

スピーカー:インベストメント・ストラテジー・グループ ジム・ラウリー

ジム・ラウリーオリー・ルドウィッグ:ここ20年以上にわたり、米国の上場企業の数は減少しています。バンガードの調査報告を見て、驚く人もいるでしょう。米国の上場企業の数は、ほぼ50%も減少しているのです。これは投資家が懸念すべきことでしょうか?

本日は、その調査報告書『上場企業数減少の背景は?』の著者の一人から、米国証券市場の動向についての意見を聞きたいと思います。

こんにちは。オリー・ルドウィッグです。今月のエピソード(2017年12月14日録音)では、上場企業数の減少――1990年半ばには約7000社あった上場企業が、現在では3800社――を取り上げ、このことが投資市場と投資家にどのような影響を与えているのかを検証します。


バンガード・インベストメント・ストラテジー・グループのアクティブ/パッシブ・ポートフォリオ・リサーチヘッドであるジム・ラウリーを迎え、現状および、投資家やアドバイザーの考えを明確にしていきたいと思います。

ジム、今日は来てくれて、ありがとうございます。

ジム・ラウリー:ありがとう、オリー。光栄です。

オリー・ルドウィッグ:私はこの数字――50%の減少、7000社から3800社へ――という数字に注目しています。21年間に半数の企業がなくなったということになります。なぜなのでしょう?

ジム・ラウリー:その質問には、2段階の答えがあると言えます。まず、何が起こっているのかということです。これは、必ずしもなぜなのか、ということではありませんが。私たちの調査は、何が起こっているかということに注目していますからね。そして次に、なぜこのことが投資家には影響しないと考えているかを説明したいと思います。過去、ヘッドラインでは何度も取り上げられたテーマではあるものの、米国株式市場を構成している企業の時価総額に沿って現状を観察すると、投資家にとってはあまり大きな変化はないと考えています。

オリー・ルドウィッグ:数字だけ見ると私はこう考えてしまうのですが――これは、投資家にとってとんでもないことに違いない、と。でも、投資家にとってそんなに悪いことではないとおっしゃるのですね? そういう理解で大丈夫でしょうか?

ジム・ラウリー:そのとおりです。私たちがまず最初に調査したのは、何が原因なのかということですが――まずIPO(新規株式公開)の数が減少しているということが分かりました。そして、まずそれについて調べようということになりました。

すると、2つの傾向が目に留まりました。そしてまず、IPOそのもの、つまり上場企業数に加わった企業そのものを調べてみようということになりました。大型IPOとそれより小型のIPOに分けてみたのです。大型IPOとは、総収益が一億ドル以上のIPOです。このタイプのIPOの数に、あまり変化はありませんでした。安定した傾向があるということです。

変化があったのは、総収益が一億ドル未満のIPO企業です。つまり、小規模企業の中でも特に小さな企業、超小型株であり、必ずしも投資可能な企業ではありません。

IPOについて私たちが気づいたもうひとつの傾向は、「ファントム」企業と私たちが呼ぶ企業群についてのものです。ファントム企業とは、その企業として株式公開を行ったのではなく、別の上場企業に買収された企業を指しています。上場企業数の測定に話を戻しますと、こういった企業は、一企業としてはカウントされません。その企業自体は株式公開していないからです。しかし、こういった企業の経済価値、すなわち時価総額は、現在の上場企業に引き継がれています。なので、上場企業が一社増えたわけではないですが、その財務状態、経済価値、時価総額は、市場に反映されていることになります。しかし、それは他の上場企業の一部に過ぎません。

オリー・ルドウィッグ:では、企業の数が強調されることで、実態を反映していない統計を見てしまうということでしょうか? ギアをシフトさせて、時価総額というレンズから全体像を見始めると、上場企業数というのは、重要性を持たない数字なのでしょうか?

ジム・ラウリー:企業数から企業の時価総額の配分へと視点を移すと、企業数というのは重要性を持たない数字です。前述の報告書では米国市場での大型株、中型株、小型株、超小型株の数を図表で示しています。そして、そこからわかる明らかな傾向は、上場企業数の減少は、ほぼすべて超小型企業数の減少によるものということです。しかし、視点を変えて「時価総額の配分はどう変わったか?」、つまり数という面から見るのではなくて時価総額という面から見ればどうなるでしょうか? 常に一定と付け加えてもいいですが、米国での超小型株企業というのは、時価総額全体の1.5%を安定して占めてきました。

オリー・ルドウィッグ:ではある意味、「コップの中の嵐(ささいなことで大騒ぎすること)」ということですね。市場において「針路を維持」している部分、つまりIPOでもより大きな、総収益が一億ドル以上の企業について説明をお願いします。特にそういう企業の動向について――成長はないとしても、安定した傾向を示しているのですよね?

ジム・ラウリー:少し話がそれるように聞こえるかもしれませんが、投資家に対して、私たちはよく「投資可能な市場」という言葉を使います。この議論や概念は、インデックス・ファンドにもアクティブ・ファンドにもあてはめることができます。まずは、インデックス・ファンドで考えてみましょう。インデックス・ファンドは典型的には指数に連動しますが、その指数は幅広い投資可能な市場か、投資可能な市場に含まれる一部のグループを反映しています。つまり実際の投資対象となるのは、最低限の規模と取引量があり、流動性の基準を満たしている、市場で投資可能な大型株、中型株、小型株の企業群だということです。言い換えれば、アクティブ運用のマネージャーであれ、インデックス・ファンドのマネージャーであれ、実際に取引に関係しているのは、投資可能な小型株以上の市場の証券なのです。

投資可能な市場の定義をお伝えしたところで、その動向に対する回答としては、投資家が実際に投資する市場である大型株、中型株、小型株の時価総額ベースでの配分は、おっしゃる通りほぼ変化していないというのが実状です。

オリー・ルドウィッグ:つまり、ある意味、超小型株は最初からあまり投資可能ではないということですね。そして現状では――私は今の内容を確認しているだけですが――市場の投資可能性は、今日話題になっている企業数の減少という傾向には、あまり影響されていないということですね。この理解で正しければ、もう少し、掘り下げて話していただけるでしょうか?

ジム・ラウリー:分かりました。別の言い方をすると、あなたが投資家で、時価総額をベースに米国市場に投資しているとします。その際、大型株、中型株、小型株といった時価総額ベースのカテゴリー分けがされているでしょう。しかし少し視点を変えて、超小型株に目を向けたとします。これらは、市場の時価総額において、ごくわずかな比重しか占めていません。そのため、私たちは、これらを投資可能ではないと位置づけるかもしれません。大きさという観点から、市場全体に占める割合が低いのです。

オリー・ルドウィッグ:それで、いつもバンガードで私たちが言っていることに戻ってくるわけですね。つまり、顧客には充分に分散化してもらいたいと。企業数が減っているのは超小型株が中心で、時価総額ベースでは大きな変化が見られない点を考慮すると、米国投資家の充分に分散化する能力は変わらない、損なわれることはない、今まで通りであるということでしょうか?

ジム・ラウリー:少なくとも、市場の健全さを、企業の数だけで測るべきではないと思います。そうではなく、投資家としては、時価総額の構成、つまりセグメント間の比率を考えることのほうが大事です。そして一歩進めて、もうひとつ確かめたい点は、市場の集中度はどうなのかということ。先ほど述べたとおり、大型株や中型株、小型株、それぞれの時価総額ベースでの比率に変化はありませんが、これらのカテゴリーのどこかに、市場の集中度を高めている企業が存在しているのでしょうか? 米国株式市場の集中度を計測しようとする産業経済の研究から、いくつか測定値を借りてきましたが、集中度にも変化はないとわかりました。

オリー・ルドウィッグ:もう少し、超小型株について詳しく質問させてください。小規模の企業数が減っていることは、投資家にとっては今までと比べると、資本金の小さな企業にアクセスしにくくなっているということでしょうか? 規模の小さい企業について、調査結果がどのようにでているかは存じています。ポートフォリオにおける標準偏差が高い(ばらつきが大きい)ということですね。しかし一方で、桁外れなリターンの可能性があると思います。これらのデータに関連して、注目すべき妥協案はあるでしょうか?

ジム・ラウリー:妥協案というよりも、米国の株式市場に投資することの意味についての討論になるでしょう。もしも投資家が中型株または小型株企業に注目し、「これらの企業に投資したいかどうかわからないな、大型株よりもボラティリティが高そうだ」と考えているとしたら、「これらは米国株式市場の一部である」というのが、バンガードの視点です。たとえば大型株だけで資産配分をしようとすると、それは市場の大部分を代表しているといえるでしょうか? 大部分ではあるかもしれません。しかし、米国株式市場のすべてではありません。中型株、小型株の企業も、米国株式市場の一部なのです。米国株に投資したいと思えば、これらはすべて、その部類に属するのです。

オリー・ルドウィッグ:ジム、本日は調査報告書『上場企業数減少の背景は?』について討論するため、考えや見識を共有してくださってありがとうございました。

ジム・ラウリー:ありがとう、オリー。この機会を与えてくれたことに、感謝します。

オリー・ルドウィッグ:ファイナンシャル・プランニングの様々なトピックについて、私たちの考え方をもっとお知りになりたければ、バンガードのウェブサイトをご覧ください。ご清聴ありがとうございました。


 

ご留意事項

  • 本資料は情報提供のみを目的としたものであり、掲載された情報や表明された意見は金融商品の売買を提案もしくは勧誘するものではなく、証券投資に関するアドバイスを提供もしくはアドバイス提供サービスの勧誘を行うものでもなく、また前述のいかなる用途への利用も認められません。
  • 本資料は、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
  • 一般に、株式の価格は個々の企業の活動や業績、市場・経済の状況等を反映して変動し、また、公社債の価格は市場金利の変動等を受けて変動するため、 株・債券の価格が下落し、損失を被ることがあります。株・債券の価額の変動要因としては、主に「価格変動リスク」や「為替変動リスク」、「カントリーリスク」、「信用リスク」、「流動性リスク」などがあります。

 印刷