米国の大統領選挙が投資家に及ぼす影響

25 August 2020 | マーケット・経済

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投資を成功へと導くバンガードの基本原則の1つは、大局的な視点と規律を維持することです。この特性が備わっていれば、市場の不透明性が高まっている局面でも長期的な投資計画に専念することができます。

米国の大統領選挙に向けた予備選挙ほど、長期にわたり、予測が困難でイベントはないでしょう。1年以上もの間、選挙に関するニュースが連日のように報道され、投資のポートフォリオに与える影響が頻繁に話題に上ります。資産運用業界の関係者を含む多くの観測筋は、どの候補者あるいは政党が勝利を収めるかを踏まえて市場予測を行っています。

バンガードでは、ほとんどの短期観測がそうであるように、このような予測は疑わしいと考えており、投資家は過去の長期データに基づいて判断すべきであると考えます。

バンガードの投資戦略グループのエコノミストであるアダム・シクリングが150年以上の資産リターンを分析し、選挙との関係性の有無を検証しました。シクリングは、共和党大統領と民主党大統領それぞれの任期中のリターンに加え、選挙年に不確実性が高まることで市場のリターンが低下するか、あるいはボラティリティが上昇するかを分析しました。

選挙、リターン、ボラティリティ

シクリングは次のように述べています。「過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありませんが、150年分のデータは、合理的な将来予測を行う上で十分と言えるでしょう。『今回は状況が違う』と口実を作って過去の実績を軽視すれば、投資に関する典型的な思い違いをすることになります。」

シクリングが株式60%、債券40%のポートフォリオを用いて分析したところ、どちらの政党が政権を担うかによって若干リターンに差があることが確認されました。「ただし統計的に有意な差は認められず、差は投資期間によって変化しています。投資戦略という点では、ほとんど意味がないと言えるでしょう」とシクリングは述べています。また、選挙年とそうでない年では、リターンに若干の差があることも分かりました。シリングによれば「これも統計的に有意な結果ではなく、偶発性、つまりノイズに起因すると考えられます。」

与党が変わってもリターンはほぼ同じ

出所:グローバル・フィナンシャル・データのデータに基づきバンガードが算出した株式60%/債券40%のポートフォリオ。その年の半分以上政権を担った政党に基づいて、年を分類。

過去のデータによると、政権を握る政党によって、リターンに大きな差が出ることを心配する必要はないようです。では、大統領選挙の年に市場はどう反応するのでしょうか。

バンガードが月次リターンを分析したところ、パフォーマンスにパターンがあることは確認できませんでした。1位にランクされた月が、2位、5位、あるいは12位になることもありました。また、過去12回の選挙年で1回だけその順位にランクされた月は平均7.2でした。これに対し、完全にランダムなデータ・セットでは、平均7.8でした。つまり、選挙年の月次リターンは、ランダムなデータに極めて近いということになります。

「選挙年に戦術的に投資する戦略の大半は先読みバイアス(look-ahead bias)の影響を受けており、その時点で入手できなかった情報を用いることで、想定パフォーマンスが高くなりがちです。1972年と1980年のパフォーマンスをもとに『11月に買え』という戦略が1984年に推奨されたかもしれませんが、1984年と1988年はアンダーパフォームしました」とシリングは言っています。

月次パフォーマンスの分布はほぼランダム

出所:トムソン・ロイターのデータに基づきバンガードが算出したS&P500指数の選挙年のリターン

同様に、投資家は株式市場のボラティリティが予備選挙中に上昇することも期待しないほうが良いでしょう。シクリングの分析によれば、大統領選挙前後の数週間は、全期間に比べて株式のボラティリティがやや低下していましたが、統計上は有意ではありません。

株式ボラティリティは選挙前後の数週間に低下

出所:トムソン・ロイターのデータに基づきバンガードが算出したS&P500指数の日次リターンのボラティリティ(1964年1月1日から2019年12月31日まで)

複数の争点が絡む問題

では、投資家の心理において、米国の大統領選挙(他の選挙もですが)は、何が違うのでしょうか。バンガードの投資戦略グループでシニア投資ストラテジストを務めるジョナサン・レムコPh.Dによれば、投資家が慎重に検討し、長期戦略からの逸脱を考えるような出来事のほとんどは、争点が1つです。「しかし大統領選挙年の政治には複数の争点があり、4年間の政策に影響を与えます」とレムコは指摘しています。

「投資家は自分の投資目標と長期戦略を見失わないようにすることが重要です。金融市場の仕組みは非常に複雑で、101の外部変数の影響を受け、各変数の重要度はバリュエーション、景気サイクル、投資家心理などに左右されます。政治はそうした数多くの変数の1つにすぎないため、切り離して考えることでは知見を得られません」とレムコは述べています。

 


 

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