市場および経済環境に関するグレッグ・デイビスへのインタビュー

14 December 2018 | マーケット・経済

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投資および経済環境を正確に評価することには、しばしば困難が伴います。昨今、多くの要因が複合的に作用し、その困難さが徐々に増しています。世界経済の拡大局面が続き企業収益は引き続き増加していますが、経済成長は鈍化しつつある可能性があり、今年後半の株価ボラティリティの上昇によって、市場環境がいかに急速に変化し得るかが浮き彫りとなりました。

バンガードの最高投資責任者(CIO)であるグレッグ・デイビスは、以下のインタビューで、投資および経済環境、投資家の期待について、またテクノロジーがどのように金融市場の効率と透明性を向上させているかについて論じました。

2009年初頭に世界の多くの地域で始まった株式の強気市場は、約10年間続いてきました。投資家は自らの期待を調整すべきでしょうか?

グレッグ・デイビス:当社の公正価値測定の指標に基づくと、世界的に分散化された株式ポートフォリオの今後10年の年率リターンは4.5~6.5%のレンジとなると予想しています1。この水準は、同ポートフォリオの過去の長期的な平均リターンの約半分に相当します。またこれは10年前の金融危機時につけた底値以降の年率リターンの約3分の1に相当します。したがって、確かに一部の投資家は株式に過剰な期待をしていると言えるかもしれません。

当社の世界株式ポートフォリオに対する主な予想(米ドルベースの投資を仮定)は下記のとおりですが、米国以外の市場に対してやや高め、米国市場に対してやや低めの予想をしています。当社は、米国以外の株式に対して、わずかながらより楽観的な見方をとっています。なぜなら、米国以外の株式のバリュエーションの方が比較的割安な水準にあるためです。

米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)は短期金利の誘導目標を過去3年間に8回引き上げました。FRBが金融政策正常化に向けて行動する中、米国債券市場ではどのような変化が生じたでしょうか?

グレッグ・デイビス:長期債利回りは、FRBが現在の利上げサイクルを開始してから6カ月後に当たる2016年半ば以降、上昇に転じました。しかしそれ以降、イールドカーブは大幅にフラット化しました。長期債の利回りが短期債の利回りほど上昇しなかったためです。長期債利回りの上昇幅が比較的小幅となった理由の1つは、米国のインフレ率がFRBの目標値である2%を超えるまでに長い時間を要するとの懐疑的な見方を投資家がとっていることだと考えています。短期利回りを中心とした利回りの上昇がもたらした影響の1つとして、現金および米国短期国債の投資妙味が高まったことが挙げられます。それは実際に株式と競合する場合があります。

追加利上げはあと何回実施されると考えられますか?

グレッグ・デイビス:12月18~19日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で年内にあと1回の利上げが実施されると予想しています。FRBの今回の利上げサイクルで実施されたすべての利上げと同様に、0.25%の幅で追加利上げが行われることはほぼ確実です。それによって誘導目標金利は2.0~2.25%から2.25~2.5%のレンジに引き上げられます。来年、さらに2回の利上げが実施されると予想しています。2019年下半期に入るまでに誘導目標金利が2.75~3.0%となり、中立金利の領域に達するとみられます。

米国以外の国の中央銀行は、誘導目標金利を世界金融危機後の低水準から引き上げ始めたばかりです。今後それらの中央銀行はどのような方向に進むと予想していますか?

グレッグ・デイビス:欧州中央銀行(ECB)は2019年下半期まで政策金利を据え置き、それ以降、金融政策の緩やかな正常化を開始すると予想しています。日銀は2019年には利上げを実施しないとみています。新興国の中央銀行の多くが、FRBの動向に合わせて金融の引き締めを迫られるでしょう。ただし中国は、資本管理の一層の強化と人民元の小幅の下落を通して、こうしたトレンドを回避しています。

バンガードの債券グループは、債券および短期金融市場の資産で1兆2,000億米ドルを上回る額を運用しています。バンガードの運用チームはどのようなポートフォリオ構築アプローチを重視していますか?

債券のアクティブ運用ポートフォリオを考える場合、当社は若干ディフェンシブな姿勢をとってきました。投資適格債およびハイイールド債のバリュエーションの魅力は、過去10年間に比べて低下しています。利回り差が大幅に縮小し、低リスク証券と高リスク証券の利回り差は以前ほど大きくなくなっています。

現在、景気サイクル後期にあり、FRBが引き締め政策を強化するリスクがあることを踏まえると、米国の投資適格債およびハイイールド債は、企業の借入コストの上昇からマイナスの影響を受ける可能性があります。新興国債券についても、その多くが米ドル建てで発行されているか、または米ドルペッグ制を採用する国で発行されているため、同様にマイナスの影響を受ける可能性があります。無論、このことは投資家がこれらのセグメントへの投資を回避すべきであるということを必ずしも意味するわけではありません。長期的な投資の成功には分散化が不可欠であると考えています。私は、投資の研究者であるピーター・バーンスタインが言った、「自分を不安にさせる何かに投資していなければ、それは真の分散化とは言えない」という言葉が好きです。

今後10年間の株式の予想リターンへの言及がありましたが、世界の債券市場のパフォーマンスはどのようになると考えられますか?

グレッグ・デイビス:当社の投資戦略グループは「2019年の経済および市場見通し」の中で、主に中央銀行による政策金利の引き上げと利回りの上昇にけん引され、世界債券のリターンは米ドル建てで年率2.2~4.2%のレンジになると予想しています。当社の予想は、当社の1年前時点での予想(1.5~3.5%のリターンを予想)に比べて大幅に高くなっています。しかし、過去の長期的なリターン(4.7%)に比べると低い水準にとどまっています。

当社の新たな予想が的中すれば、世界的に分散投資を行う世界の多くの債券投資家は、長期的に実質リターン(すなわち物価上昇率を上回るリターン)を獲得すると考えられます。これは、各中央銀行がインフレ率を2%のレンジ(これは概ね米国、カナダ、オーストラリア、日本、英国およびユーロ圏が目標としている水準)に維持できることを前提としています。

最近、世界中で経済成長が小幅に鈍化する兆候がみられます。経済成長の鈍化は金融市場にどのような影響を及ぼす可能性がありますか?

グレッグ・デイビス:経済成長の鈍化が市場に与える影響は、それが次にいつ起こるにせよ、おそらく2つの要因に大きく作用されるでしょう。その要因とは、鈍化のスピードおよび深さと、投資家がそれらの変化をどの程度正確に予想するかという点です。当社の投資戦略グループは最近、経済的なサプライズと様々な資産クラスのリターンに関する興味深い調査を終えたところです。調査の結果、短期的には両者にある程度の相関性が認められました。ただし、その関連性は景気サイクルのどの段階にあるかによって変わることもわかりました。一方、長期的には、経済的なサプライズは重要ではないことがわかりました2

来年または今後1~2年の間に米国が景気後退に陥る確率はどの程度あるのでしょうか?

グレッグ・デイビス:当社の基本シナリオでは米国が景気後退に陥るとはみていませんが、イールドカーブのフラット化によりその確率は上昇したと考えています。現時点で、2019年の確率は20~30%と考えられます。2020年には、これが30~40%に上昇するリスクがあると考えられます。景気後退リスクの上昇を促す主な要因は、金利上昇と世界経済の成長鈍化です。当社による推定は、一組のモデルを反映しています。そのモデルとは、イールドカーブのスロープに基づくシングルファクター・モデルと、クレジット・スプレッド、株式市場のリターン、経済成長を示すシグナルなどの先行指標を考慮に入れたマルチファクター・モデルです。イールドカーブは、景気後退を警告するシグナルとして使用されないこともありますが、当社の調査はそれを無視すべきではないことを示唆しています3

最近、インデックス運用の拡大に注目が集まりつつあり、その増加が株式市場の市況の悪化につながるだろうとの憶測もあります。これについて何か根拠があると考えますか?

グレッグ・デイビス:何が市場の次の調整の原因となるのかはわかりませんが、インデックス運用が原因とはならないでしょう。その点に関してはいくつかの理由から確信を持っています。第一に、これまでインデックス運用と市況の悪化の間に相関性は全くみられていません。インデックスファンドで運用されるファンド資産の割合は着実に増加してきましたが、市場の変動はほぼ不規則に生じてきました。第二に、インデックス運用のミューチュアルファンドおよび上場投資信託(ETF、その大半がインデックス戦略を採用)の市場全体に占める割合はわずかです。米国株式(インデックス運用が確かに最も多く採用されている資産クラス)においてインデックス運用が日次の上場株式の取引量に占める割合は5%未満です。そしてETFのほぼすべての取引は、ETFの受益権を投資家間で移転しているだけのものです。ETF取引のうち、ファンドを構成する証券の売買を生じさせている取引は約10%に過ぎません。最後に、インデックスファンドの投資家が次の市況悪化時に売却を急ぎ、市況悪化に拍車をかけるだろうとの主張が一部でなされていますが、2000~2002年および2008~2009年にそれとは逆のことが起こりました。投資家はインデックスファンドを求め保有を大幅に積み増したのです。投資家が次の市況悪化時にこれと大きく異なる行動をとると考える理由は見当たりません。

ビットコインのような仮想通貨についてどのように考えますか?

グレッグ・デイビス:当社はビットコインを選好しておらず、それを投機的なバブルと捉えています。ただし、デジタル通貨を支える技術であるブロックチェーンには強い関心を持っており、当社や金融市場の効率の向上にどのように寄与できるのかを注視しています。例えば、当社はベンチマークを提供するシカゴ大学証券価格研究センター(CRSP)とブロックチェーン技術の企業であるシンビオント(Symbiont)と提携し、ブロックチェーンのネットワークを活用して日中のインデックスデータの送信を自動化しようとしています。これにより透明性が高まるとともに、手作業による処理により時々引き起こされる中断のリスクが低下するでしょう。一方、これにより資本市場が投資家にとって、より低コストで迅速かつ正確なものとなります。

バンガードのCIOに就任して約18カ月が経ちました。顧客や見込み顧客に伝えたいメッセージが1つあるとすれば、それは何でしょうか?

グレッグ・デイビス:それは、当社がインデックス運用と低コスト運用のリーダーにとどまらない、それ以上の企業であるということです。当社にはアウトパフォームするアクティブ運用ファンドを提供してきた実績もあります。例えば、2018年9月30日終了の10年間で、当社の米国籍のアクティブ運用ファンドの92%が競合するファンドの平均リターンを上回るリターンを上げました4。また当社は、投資家が、直接または金融アドバイザーやコンサルタントを通して、自らのため、家族のため、または機関投資家のために投資しようと、彼らがどこでも可能な限り最善な決定を行えるよう支援する確固とした方針を持っています。このため当社は、金融アドバイスを提供する当社の能力に多くの投資を行ってきました。インデックス運用と低コスト運用の実現だけにとどまらず、はるかに多くのことができる当社の能力は、当社の企業としての安定性と顧客重視の方針の当然の帰結です。最終的にそれは当社のミッション(すべての投資家に対して、味方となり、公平に接し、投資で成功するための最良の機会を提供すること)を反映しています。当社は真剣です。

(注釈)

1 10年間は2019~2028年。出所:バンガード「2019年の経済および市場見通し」

2 追加情報はバンガードの「グローバル・マクロ・マターズ」シリーズの研究報告書「今日はここにあるが明日は消え去る:経済的なサプライズが資産のリターンに及ぼす影響(Here Today, Gone Tomorrow: The Impact of Economic Surprises on Asset Returns)」(2018年)を参照。

3 追加情報はバンガードの「グローバル・マクロ・マターズ」シリーズの研究報告書「金利の上昇とイールドカーブのフラット化:『今回は違う』というわけではない、単に長い期間を要する可能性(Rising Rates, Flatter Curve: This Time Isn't Different, It Just May Take Longer)」(2018年)を参照。

4 同10年間に、9のバンガード・マネーマーケットファンドのうち9ファンド、44の債券ファンドのうち39ファンド、6つのバランス型ファンドのうち6ファンド、40の株式ファンドのうち37ファンド、すなわち合計で99のバンガード・ファンドのうち91ファンドがそれぞれの類似するファンド・グループの平均をアウトパフォームしました。他の期間に関する結果は異なります。この比較には最低10年間の運用実績があるファンドのみが用いられました。出所:リッパー(トムソン・ロイター・グループの1社)


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