「大崩壊」と回復への道

14 May 2020 | マーケット・経済

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バンガード  グローバル・チーフ・エコノミスト ジョー・デイビス

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な流行)が世界経済に及ぼしている影響は、計り知れないほど甚大で、過去に例を見ません。まさに未曽有の事態と言えるでしょう。

現在の経済環境を過去の景気後退期と比較すると、今回のパンデミック及び、その感染拡大防止に向けた各国の取り組みがもたらしている衝撃の大きさが分かります。ここでは米国を例に挙げて説明しますが、米国以外の国々でも状況は似ています。今回の封じ込め措置が経済成長と雇用に及ぼす衝撃を考えると、2008年の世界金融危機ですら、たいしたことはなかったと思えるほどです。

米国のGDPに与える前例のない衝撃

出所:米国経済分析局。2020年4月の数値は、バンガードが予測する米国の第2四半期GDP成長率

4年もの間、経済に影響を与え続けた大恐慌と、今回の状況を比較することは適切ではありません。私は今回の状況を「大崩壊」と呼びたいと思います。確かに、現在の衝撃は深刻です。しかし、新型コロナウイルスによる最大の健康リスクが過ぎ去り、経済活動が再開できると判断されれば、過去の景気後退期よりも早く回復に向かう可能性があります。

成長の再開:2段階の回復

バンガードのベースラインケースでは、米国、欧州およびアジアにおける全面的な規制は、夏までに解除が始まると想定されています。経済活動の再開は段階的に行われ、一部のセクターは他のセクターよりも早く態勢が整うことが期待されます。景気回復は「V字型」と「U字型」のどちらになるでしょうか?その両方の要素があるというのが、私たちの考えです。

V字回復は、回復までの軌道がアルファベットの「V」に似ていることからそう呼ばれますが、これは下落のスピードに左右されます。現在は下落が急激であり、状況は深刻ではあるものの、長期化する可能性は低く、理論上はパンデミックにより減少したGDPが持ち直し、失業率が低下し始めれば、直ちに景気後退から抜け出すことになります。

しかし、見通しはそれほど明るくはありません。感染拡大防止策が引き起こす供給ショックに加え、人との接触が生まれる活動(外食や旅行、大規模イベントへの参加など)再開への抵抗から生じる需要ショックを考えると、経済活動がパンデミック前の水準に戻るには、2年かかる可能性があります(U字回復)。他のセクターより早く回復するセクターもあるでしょう。しかし労働市場が以前のように引き締まるのは2023年以降になると見込まれ、FRB(米連邦準備制度理事会)もその間、政策金利をゼロ近辺に据え置く可能性があります。

繰り返しになりますが、以下のグラフは米国を例に2段階の回復を示したものでありますが、他の先進国も同じような道をたどるとバンガードは考えています。

段階的な回復

出所:米国経済分析局およびバンガード予測

「何でもやる」

パンデミックが始まった当初からバンガードは、企業の倒産や債務超過、解雇といった経済の傷を広げないようにするには、実効性のある政策を大胆かつ迅速に実施する必要があると主張してきました。この2カ月間、世界各国で数多くの金融政策(証券の買い入れを通じた市場への流動性供給と市場の機能維持)と財政政策(個人と企業を救済するための現金給付)が実施されています。今にして思えば、世界金融危機での政策は、本番前のリハーサルとして役立ったようです。

これまで実施された総額数兆米ドルに上る世界各国の政策努力を、私たちは概ね支持しており、私を含むバンガードのエコノミストは、引き続きその専門知識と見解を政策担当者と共有しています。今回のような前例のない衝撃では「やれることは何でもやる」という姿勢が適切であり、市場もこれを好感しました。バンガードが注視している財政状態の指標は、世界金融危機の時よりもずっと早く安定しています。これは広範かつ、大規模な政策が迅速に実施されたことの証しです。こうした取り組みは、FRBが拡大したバランスシートの縮小に向けた取り組みや、拡大する財政赤字に政府の方策などに対して、長期にわたり影響を及ぼすでしょう。

景気回復の予測には、経済の広範なシャットダウン(活動停止)が終わる時期を考慮に入れる必要があります。バンガードでは、第2四半期の終わりまでに経済活動がほぼ再開すると想定しています。私たちは疫学者ではなくエコノミストですので、感染の第二波、またはウイルスの突然変異により再び広範なシャットダウンの可能性についての予測はできません。こういった可能性は「リスク」と捉えることしかできず、実際に発生すれば、私たちの景気回復見通しは、より悲観的なものとなるでしょう。

しかし、リスクとは(少なくともエコノミストにとっては)ベースライン予測以外の出来事が発生する可能性のことであり、悪い場合だけではありません。ワクチンや有効な治療法が予想より早く開発されれば、景気回復は早まるでしょう。消費者は通常の生活に戻ることを望んでいるのですから尚更です。また新型コロナウイルスの感染者数がクリティカルマスに達し、「集団免疫」の獲得が近いことが明らかになった場合も同様です。

こうした上振れリスクが実現したとしても、「大崩壊」が決定的な変化をもたらすことに変わりはありません。過去を振り返ると、歴史に残るような深刻な出来事は、すでに始まっていたトレンドを加速させ(今回の例としてはテレワーク)、社会と消費行動を変容させてきました。私たちはまさに、大きな変化を目撃しようとしているのです。

 


 

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バンガード・マーケティング・コーポレーション、バンガード・ファンドの販売会社

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