バンガード会長兼CEOからのメッセージ:不可知に直面したとき

24 February 2017 | マーケット・経済

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ビル・マクナブ 投資家として、私たちはリスクについて耳にすることに慣れています。マーケット・リスク、インフレ・リスク、為替リスク等々があります。しかし、どのような形のリスクであれ、不確実性ほど投資家にとって困難なことはありません。私の経験では、どれだけ上手く不確実性に対応するかが、長期的な投資の成功にとって鍵となります。

もちろん、私たちは、投資においては、完全に明確であるという余裕を持つことは決してありませんし、結局のところ、誰も占いのための水晶玉を持ってはいません。しかし、現在の環境には、通常以上の不確実性が存在しているようです。

米国の新政権が新たな政策を発表し、英国政府がEU離脱を実行に移す準備を行い、中央銀行が金融政策や金利についての考えをシフトし、市場関係者が経済成長、中でも中国の経済成長について懸念し続ける中、世界経済については多くの疑問が存在しています。漠然とした不安感は、過去数ヵ月の間に顧客の皆さまから寄せられた多くの質問の中に反映されています。

不可知の困難に立ち向かう

不可知とは、人知では知ることができないことを意味しますが、まず、リスクと不確実性の違いについて考えてみましょう。リスクは、たとえ100%正確ではなくても、測定することができます。正しいデータを持つ投資家は、例えば、ある会社が収益予想を達成できない可能性について合理的な確率を計算することができます。

不確実性は、それほど容易には定量化することはできません。予想の範囲を完全に外れる“ブラック・スワン”的な事象が存在します。そのような出来事を理解するのに必要なデータは、知られていないか、あるいは知ることができません。 

不確実性の時代には、投資家は誤った決定をしがちです。市場は、頻繁に、予想外のことに反応して乱高下します。そのようなことが2016年に多く見られましたし、私は、今年も、同様に市場を混乱させる出来事が起こると予想しています。一部の投資家は、ボラティリティをトラブルの兆候として捉え、自分が安全な投資先だと考えるところに逃避します。他の投資家は、絶えず、買いの好機であると考えます。両者とも、次のような、一般的な投資家が陥る偏好の犠牲になる可能性があります。

  • 自分の決定を裏付ける情報だけに焦点を当てる。
  • 過去のパフォーマンスは将来の結果を示すものであるという誤った確信に基づいて投資する。
  • 賢明な分散を犠牲にして、馴染みあるものに執着する。

このような自然な傾向の問題は、私たちに長期投資計画を忘れさせてしまうことにあります。それは決して良いことではありません。

凡ミスを回避するために

健全な投資は、若い頃から私の中に深く根付いています。私の両親は、分散されたポートフォリオを構築することで老後に上手く備えました。彼らは、必然的に不確実な将来に対する最も合理的な対策は分散投資であると認識していました。しかし、皆さんのご家族と同様に私の家族も、一般的な偏好に負けてしまう可能性があります。

1990年代のITブームの時に、常に市場を注視していた私の母は、当時、高い人気のあった銘柄に投資したいと考えました。母は、これらの企業について読み、テレビでそれらの企業の話を聞き、それらの銘柄が良い投資先であるという自身の考えを確信しました。また、別の時には、株式市場が回復に転じる直前で金融危機により株価が最安値を付けていた2009年3月に株を売却したいと考えました。これらは恐ろしい時代であり、母は長年に渡りコツコツと積み上げてきた籠の卵をただ守ろうとしていたのです。母が両方の決断を考え直してくれてよかったと思っています。

もちろん、私たちは誰も、間違いを逃れることはできません。私も、罠にはまってしまう可能性があります。そのため、投資家として私たちのほとんどに影響を与える偏好に対処する習慣を身につけようとしてきました。このような習慣は、秀でた投資の洞察力を必要とはしません。 

例えば、私は、投資の方程式から感情を取り除こうとします。毎年末に、私は、退職勘定を確認して、リバランスが必要かどうかを決定します。しかしながら、特定のファンドがオーバーパフォームあるいはアンダーパフォームした理由を解明するのに時間を費やすことはめったにありません。私は市場のノイズによってそそのかされたくないのです。

不確実性に対処するもう一つの方法:より多く貯めて投資することです。市場がどこに向かおうとしているのかを確実に知ることができないように、私たちは、健康やキャリアの頓挫といつ戦うことになるかを予測することはできません。余分にお金を貯めて投資することは容易ではありませんが、それは、悪い状況を最大限に活用する柔軟性を私たちに与えてくれます。

確実だと言える唯一のこと 

投資においては、不確実性は常に存在し、それは痛みを伴うものです。相場が一本調子で下落している棒下げの市場においてドルコスト平均法を実行し続けることは困難です。同様に、短期的な騒音は、定期的なリバランスを止めるように誘惑するかもしれません。規律あるリバランスは、長期的目標を達成するために極めて重要です。伝説的投資家のジョン・ネフの言葉を言い換えると、投資に最適な時は、あなたの胃がもっともキリキリしている時かもしれません。

私のポートフォリオは、完全に分散化されているので、常に、予想をアンダーパフォームする銘柄が含まれています。ほとんど常に、予想を上回る銘柄もあります。これが分散投資の力であり、投資の成功の秘訣なのです。

 


 

ご留意事項

リスクに関する情報

一般に、株式の価格は個々の企業の活動や業績、市場・経済の状況等を反映して変動し、また、公社債の価格は市場金利の変動等を受けて変動するため、 株・債券の価格が下落し、損失を被ることがあります。株・債券の価額の変動要因としては、主に「価格変動リスク」や「為替変動リスク」、「カントリーリス ク」、「信用リスク」、「流動性リスク」などがあります。

 

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