ブレグジット(Brexit): 次は何が起きるか?

28 June 2016 | マーケット・経済

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バンガードの欧州チーフエコノミスト兼投資戦略ヘッド、ピーター・ウェストアウェイ、Ph.D.

イギリス国民投票の結果が集計され、イギリス国民はEU(欧州連合)からの離脱を選択しました。

バンガードの見解では、今回のイギリスの国民投票は世界経済に影響を与えますが、直接的な影響を日本が感じるまでには時間がかかるでしょう。

国民投票のキャンペーンの苦々しさを考慮すると、最も短期的な影響としてはイギリス政局における変化でしょう。しかし、国民投票の結果自体には拘束力がありません。国民投票の結果はまず、イギリスの議会制定法に組み込まれる必要があります。次に、リスボン条約(EUの統治フレームワークの一部)の条項のもと、イギリスはEUに公式の通達を出します。そののち、実際の離脱条件の交渉が開始されます。これらの交渉は2年かそれ以上かかることが予想されます。


市場のボラティリティと投資の不確実性

国民投票までの数週間、投票結果についての憶測により、特に英ポンド建ての資産の多くで市場ボラティリティが増大しました。いくつかのリサーチによれば、ブレグジットにより英ポンド安が一層加速し、最大で20%の下落が予想されます(6月20日現在の1ポンド=約153円)。このことから、日本の投資家はイギリスあるいは英ポンドに資産配分すべきでないと考えるかもしれません。しかし、現時点までにこれらの影響の一部は、すでに市場価格に織り込まれています。

私たちが留意しなければならないのは、ブレグジットはグローバル市場に影響を与えるため、単にイギリスあるいは英ポンドから資産を他へ退避させただけでは投資目的を達成できないかもしれないということです。今回の国民投票の結果は、短期的には市場を混乱に陥れるでしょうが、一方で、十分にグローバルに分散されたポートフォリオを保有する日本の長期投資家に及ぼす影響の大きさは不明確です。

イギリス経済への影響

ブレグジットの重要な一面はイギリス経済に与える影響です。イギリス経済がどのような影響を受けるかの予測には幅があります。肯定的な見方も一部にはありますが、大多数は否定的です。

イギリスはEUから離脱すると同時に、EU加盟国に自動的に与えられている有利な貿易条件を失うこととなります。このことは、外国企業(例えば、ヨーロッパ広域の顧客へのアクセスのためにイギリスに拠点を構えたい日本企業)によるイギリスへの直接投資の意欲を減退させかねません。イギリスで就労可能なEU市民の数が制限されるとすればそれも悪影響となるでしょう。このようなEU市民が近年のイギリス経済および税収の伸びを支えてきたからです。

ブレグジットがイギリスのGDPを増大させるという主張は、日本を含む非EUの国々との貿易が増加するという推測に基づいています(そのような貿易の機会は現在の体制のもとでも既に存在します)。反EU陣営はまた、EUによる過剰な規制の撤廃はイギリス経済に一層の成長をもたらすと主張します。しかしイギリスは、既に、EUにおけるもっとも規制の緩い経済圏の一つなのです。さらに、これまでイギリスに適用されてきたEUの規制の多くは、イギリス政府が主導または支持してきたものです。イギリス政府が他のEU圏への適用規制に上乗せして導入した規制もあります。

最後に移民について、ブレグジット後もEU市民がイギリス国内で就労することは可能でしょうが、今後の決定権はイギリス政府の手中に収まることになります。あらゆる類の労働者の無制限の就労よりも好ましいとされるでしょう。

資産運用業への影響

投資家にとって、ブレグジットとはコストの増加を意味することとなるでしょう。EUによる投資ファンドへの「域内パスポート付与」により、バンガードを含む資産運用業者は欧州事業展開の拠点をイギリスに置き、EU域内でのファンド販売の低価格化と効率化を進めてきました。ブレグジットにより、このような域内パスポートが今後利用できなくなれば、資産運用業者は新たな拠点を欧州大陸に設立する必要があり、その費用は最終投資家へ転嫁される可能性があります。

他方、EUから課せられた規制コストの廃止により、イギリス国内で投資することのコストは下落する可能性があります。差し引きの影響はコスト増加とみられますが、現時点でこの点について確実に見通されているとは言えません。

上記をすべて考慮に入れますと、ブレグジットによる損益は、特に日本の投資家にとって、広範囲な要因の影響を受けると言えるでしょう。投資家にとって最良のアプローチは、これまでと変わらず、明確なゴールと、長期の視点と、十分に分散されたポートフォリオを堅持することだと言えます。


 

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