2020年の経済および市場見通し:新たな不透明性の時代

20 December 2019 | マーケット・経済

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ジョー・デイビスPh.D. │ 2019年12月

2020年には世界金融市場に何がもたらされるでしょうか? バンガードの2020年の経済と投資の見通しに関するこの要約で、ジョー・デイビス(バンガードのグローバル・チーフ・エコノミストかつ投資戦略グループのグローバル・ヘッド)が、ここから1年の予想を概説致します。

世界経済:貿易摩擦と不透明感の広がりが需要と供給の足かせとなる

世界の産業が循環的な後退局面に入り、世界経済は1年前に予見された持続的な成長鈍化の様相が2019年により鮮明になりました。米中間の摩擦に見られるような政策上の不透明感が幅広く高まり、それが投資の先送りや生産縮小をもたらしたことが、この景気減速の大きな要因です。


足元で生じている貿易摩擦がこの先1年で大きく好転することは考えにくいと思われます。地政学的な不透明感が続き、予測不能な政策決定がニュー・ノーマルになりつつあるため、その影響は2020年の需要と長期的な供給の重石になることが予想されます。GDP比での継続的な世界貿易の縮小と、高い不透明感の継続は、いずれも潜在産出量にマイナスの影響を与えます。投資が抑制され、生産性向上を加速させる技術やアイデアの普及が阻まれるためです。したがって、今後1年は概ね低成長が続くと予想します。

米国の経済成長率は2020年に潜在成長率を下回る1%程度に低下すると見られますが、一般的に経済が2四半期連続で縮小することと定義されるテクニカルリセッションは免れる見通しです。中国も今年は経済成長率が目標とする6%に届かず、2020年は潜在成長率を下回る5.8%に減速すると見られます。ユーロ圏経済は、地域経済にとって重要な産業貿易への影響やブレグジットをめぐる不透明感がやや足かせとなったことから、引き続き減速しました。ユーロ圏の経済成長率は1%前後で低成長が続くと見られます。新興国については、世界貿易の縮小を背景にアジアが中南米や一部の欧州諸国を上回る大幅な減速となりました。アジア新興国の成長鈍化が続く一方で、中南米や欧州の新興国は2019年よりも若干堅調な成長が見込まれることから、2020年もこうした成長の格差は続くと見られます。

世界のインフレ率:中央銀行が完全な(釣り合いのとれた)信認を得ることは難しい

主要国中央銀行はここ数年続けてインフレ目標の達成に失敗しています。その理由として、技術の進歩やグローバリゼーションといった根強く続く構造的要因の複合的な影響により物価が押し下げられていることや、製品価格や労働市場が失業率低下や設備稼働率の上昇に反応していないことが考えられます。

こうした長期的要因は根強く続き、足元の景気低迷で需給ギャップが拡大していることから、インフレ率は低調に推移すると見られます。米国のインフレ率はかろうじて2%に達し、連邦準備制度理事会(FRB)のコアインフレ率指標は政策目標の2%を下回ったままになると予想します。ユーロ圏と日本も同様に、インフレ率は中央銀行の目標に届かないと見られます。

政策に対する信認は物価の先行きを決定づける上で不可欠です。この数年来、消費者や金融市場のインフレ予想はほとんどの国で一貫して政策目標を下回っています。これは、技術的、政治的な理由を含む様々な理由により、金融政策の有効性を疑問視する見方が広がっていることを示唆しています。こうした低いインフレ予想がバンガードの低インフレ見通しを裏づけています。

金融政策:緩和的金融政策への転換が続く

経済成長見通しが悪化し、インフレ率が一貫して目標を下回っていることから、各国中央銀行は2019年に実行あるいは予定していた金融引締め策を取り止め、追加的な景気刺激策へと大きく舵を切りました。FRBは2019年年初からこれまでに75 bpsの利下げを行いましたが、2020年末までにFF金利の誘導目標をさらに25~50 bps引き下げることが予想されます。欧州中央銀行(ECB)は政策金利を10 bps引き下げて-0.5%とし、マイナス金利を深堀りしました。ECBは2020年も政策を概ね現行水準に据え置くと見ています。ECBの金融政策は追加利下げや量的緩和策の拡大といった形態で緩和方向に進む可能性が高くなっています。

追加的な金融刺激策の有効性は疑問視されていますが、当面、景気を大きく押し上げるのに十分な規模の財政出動が行われる可能性は低いと予想します。例えば中国はすでに債務水準の縮小を積極的に奨励することをやめており、逆風が強まる中で、おそらく金融、財政両面の刺激策を強化すると思われます。政策当局が金融の安定性を懸念していることから、こうした政策運営は急速な成長回復ではなく、ソフト・ランディングに誘導するよう調整されるものと見られます。

経済成長の下振れリスクの高まりとインフレ率の低迷を背景に、日本銀行は政策の枠組みを微調整する可能性がありますが、いかなる措置も控えめなものになり、金融機関へのマイナス影響を緩和する相殺手段も実行されるでしょう。新興国はFRBと歩調を合わせて金融緩和を進める可能性が高いと考えます。

世界の投資環境見通し:低リターン環境が続く

2020年は世界経済の減速がさらに進み、政策に対する不透明感、景気サイクル後期のリスク、割高感が高まっていることから、投資家はボラティリティが周期的に上昇する可能性を予測しておかなければなりません。世界株式市場に対するバンガードの短期見通しは控えめであり、株式やベータの高い資産が大幅に下落する可能性は依然として高く、通常の市場環境の場合を大幅に上回る高い確率となっています。質の高い債券資産は、予想リターンが名目ベースでのみプラスとなっていますが、依然としてポートフォリオを分散化する重要な手段です。

今後10年間のリターンは良く見積もっても小幅なプラスに留まる見込みです。債券リターンの見通しは、政策金利の引き下げ、全年限での利回り低下、社債スプレッドの縮小を背景にさらに低下しています。2018年年初以降、企業収益の伸びが市場価格リターンを上回り、バリュエーションが緩やかに改善したことから、株式見通しは昨年の予想よりもわずかに改善しました。今後10年間の米国債券の予想リターンは、昨年の予想が年率2.5%~4.5%であったのに対し、年率2%~3%とします。世界(米国を除く)の債券リターンの見通しは年率1.5~2.5%の範囲です。今後10年間の米国株式のリターンは年率3.5%~5.5%で、世界株式市場(米国を除く)のリターンは、バリュエーションがより適正水準となり、長期的にドル下落が予想されるため、米ドルベースで概ね6.5%~8.5%になると見られます。

中期的に見ると各国中央銀行は最終的に金融政策の正常化を再開し、それによって現在極めて低水準にあるリスクフリーレートは上昇することが予想されます。そうなれば、金融資産のバリュエーションはより魅力的な水準になると思われます。しかしながらリターンは、世界の株式が底値から年平均10%を超える上昇となった金融危機以降の10年間を大幅に下回る水準に留まると見ています。世界経済の成長減速とインフレ予想の低迷の見通しを踏まえると、リスクフリーレートと資産のリターンは、過去の水準を下回る水準が、より長期にわたって続く可能性が高いと思われます。

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