後知恵バイアスに投資計画を邪魔させない

27 July 2020 | 行動ファイナンス

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それは音楽史に残る瞬間でした。1962年の元旦、無名のロックバンドがデッカ・レコードのエグゼクティブによるオーディションを受け、不合格となります。このグループこそが、後に世界的なセンセーションを巻き起こし、史上最も影響力のあるバンドの一つとなった1 ビートルズでした。

60年近くたった今も、デッカ・レコードがビートルズの才能を直ちに見抜き、将来の成功を予測できたはずだと考える人は少なくありません。これがいわゆる「後知恵バイアス」であり、「そうなることは最初から分かっていた、と感じる現象2 」としても知られています。ある出来事が起こることを知っていた、あるいは実はそれを予測していた、と思い込んでしまう傾向のことを言います。

後知恵バイアスは投資の世界でも珍しくありません3 。市場の急落や急騰などの出来事は予測できた、あるいは明白だったというメッセージが、どのような市場環境下でもメディアや投資業界から必ず発信されます。後知恵バイアスによって、投資機会を逃した、あるいは損失のリスクがあると考えてしまうと、市場のタイミングを見計らって売買したり、ポートフォリオの資産を1つの分野に集中させたりして、必要以上の修正を加えようとする可能性もあります。

こうした後知恵バイアスを完全に排除することはできませんが、ちょっとした行動を取ることで、「そうなることは分っていた」から「この出来事から何を学べるか」と考え方を変えることができます。

後悔は自然な感情だということを理解しましょう

市場のボラティリティが高まれば不安になるのは当然ですが、長期的な投資戦略を諦めないでください。優れた投資計画であっても、時には思い通りにならないこともあります。まして市場が低迷していれば尚更です。今の状況を受け入れ、他の人も同じように感じていることを理解しておきましょう。おそらく今の投資方法を変更する必要はないはずです。多くの場合、市場が下落した後は回復します。目標を見失うことなく、理由があってこの投資計画を立てたのだということを思い出してください。お孫さんの大学進学、住宅の購入、退職後の快適な生活などの理由があるはずです。

後からとやかく言う人の話に耳を貸さないようにしましょう

試合の結果を事前に予想できたと感じるスポーツファンと同じように、市場の上昇や下落を「予測可能である」という投資のプロもいます。また、ある株式銘柄が上昇すると分かっていたから、資金をすべて注ぎ込んで大儲けしたという自慢話を耳にすれば、誰でもチャンスを逃したと感じるでしょう。市場の出来事に備えていなかった、あるいは機会を活かさなかったと言われるのは悔しいものです。こうした「雑音」が耳に入ると、自分の判断に自信が持てなくなり、自分の投資戦略で収めてきたこれまでの成功を見落としてしまうかもしれません。しかし考えてみてください。株式の一銘柄に集中投資すると決めたあなたの友人も、その業界が思わぬ打撃を受ければ、自慢していられなくなるはずです。

長期的な成果に注目し、信じましょう

「雑音を無視する」ためには、すでに実証されていて、投資目標の達成に役立つ投資原則に意識を集中する必要があります。まず明確な投資目標(個別の事情に合わせた達成可能な目標)を設定します。次に広く分散したポートフォリオを構築し、コストを意識し、市場のタイミングを見計らって売買しないようにしましょう。市場をコントロールすることはできませんが、ご自身の投資方法はコントロールすることができます。

厳しい時期はやり過ごしましょう

厳しい時期は、投資の過程で生じる一時的な出来事にすぎません。現在の状況と、これまでの成果(貯蓄の増加、税負担の軽減、負債の減少など)に目を向けましょう。スマートな投資とは長期的なリターンに注目することです。賢明な投資判断であっても、期待したような結果が出ない時期もあります。

助けを借りましょう

後知恵バイアスにとらわれ、自分の戦略を信じられなくなったら、専門家の助けを借りましょう。自主運用向けのリソースや業界の専門家、デジタルによるアドバイス、ファイナンシャル・アドバイザーなどを利用することも検討してください。

後知恵バイアスを避けることはできません。しかし、その後知恵バイアスのせいで投資計画を断念しないことが重要です。有名なレコード会社がビートルズをオーディションで落としたことを思い出してください。このレコード会社は、ローリング・ストーンズやパッツィ・クラインを輩出するなど数々の成功を収め、革新的なレコーディング技術も持っていました4 。それと同じように、あなたもこれまで賢明な判断を行ってきているはずです。ご自身の判断と計画を信じましょう。

そして、次に後知恵バイアスであなたが間違っていると言われた時も、その計画を忘れないでください。

1,4 Paul McGuinness、Decca Records: A History of the Supreme Record Company、2020年
2 Ulrich Hoffrage & Rüdiger Pohl、Research on Hindsight Bias: A Rich Past, a Productive Present, and a Challenging Future、 2003年
3 Corporate Finance Institute、Hindsight Bias、2015年


 

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バンガード・マーケティング・コーポレーション、バンガード・ファンドの販売会社

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