何よりも害をなすなかれ

25 January 2019 | 行動ファイナンス

 印刷

ドナルド・ベニホフ

編集者注:この記事の英語版が米国バンガードのウエブサイトにて、2016年3月に掲載されました。この度米国で再掲され、日本でも価値のある重要なトピックだと考え、皆さまへお伝えいたします。

私はコンピューターの画面上に「primum non nocere」と書いた小さな紙を貼っています。これはラテン語、つまり現代の生活に浸透している「死語」ですが、「何よりも害をなすなかれ」という意味です。このヒポクラテスの誓いの基礎をなす言葉は、医療分野だけでなく投資アドバイスにも当てはまります。トップニュースやコメンテーターが「何とかしよう」と騒いでいるときこそ、まず私たちは慎重に対応すべきです。つまり害をなすなかれ、ということです。


金融市場のほとんどの分野で最近ボラティリティが戻ってきています。その理由は様々ですが、一言で言うと不確実性です。興味深いことは、どれくらいの人々が、その不確実性は見かけほどではないと気づくよりも、むしろそれを心配しているかということです。ここでは「心配している」という言葉を描写と同情の両方の意味で使っています。描写という意味では人間の行動の特徴を説明しているからであり、同情とは投資家が自身のポートフォリオについて感情的になるのは無理もないと思うからです。結局のところ、資産というのは、大学の授業料、結婚資金、住宅購入、退職後の備え、慈善事業への寄付などになる大切なものです。同時に、そのような高額な資金を必要とする目的の達成には、受け身ではなく主体的なアプローチが必要です。

本当のトップニュースとは

時に、対処しなければ、何かしなければという気持ちは非常に強くなります。厳しい経済状況や世界的な対立といった悲惨な見出しに、「戦うか逃げるか」という人間の本能を抑え難いと感じることもあります。このようなとき、より長期的な視点が役に立ちます。

こうしたトップニュースは投資目標を達成するために最も重要なものでしょうか。注意を払うべきは、投資家の皆さまご自身の人生におけるトップニュースであり、報道されているトップニュースではないとご説明すれば、投資家の皆さまにご理解いただけるでしょう。

個人的に重要なニュースは資金計画や投資方針の基本となり、市場の混乱時を乗り切るための貴重なツールです。個人にとっての重要ニュースとは、自分のポートフォリオに財政面と精神面の両方から投資を始める前段階での、投資家それぞれの目標や目的の説明となります。資金計画においても、ポートフォリオは時間と共に変化させるべきという考えが強調されますが、その変更は、市場のトップニュースではなく、投資家の人生のトップニュース(子どもの誕生や、早期退職の希望など)に応じて行われる必要があります。

「進路を維持する」とは

バンガードと聞くと「進路を維持する」という言葉を思い浮かべる方が多いようです。残念なことに、この方針は「何もしない」と解釈されがちですが、この言葉には重要な意味があります。つまり、計画を立て、自分にとってのトップニュースが変化しない限りその計画を維持する、ということです。私の経験では、市場のトップニュースが資金計画に組み込まれたことはなく、そうすべきでもありません。市場の出来事は投資家個人のトップニュースとめったに関係することはなく、最も重要なのは投資家個人のニュースなのです。市場のあらゆるノイズを無視することは、「無知」でも現実から目を背けることでもありません。それは「何よりも害をなすなかれ」という基本理念の鍵であることを、投資家の皆さまに理解していただきたいと思います。

注記:
・すべての投資にはリスクが伴い、投資元金を割り込む可能性があります。


ドナルド・ベニホフ

ドナルド・G・ベニホフはバンガード投資戦略グループのシニア・インベストメント・アナリストです。資本市場に関する調査を行い、バンガードのファンド・オブ・ファンド・ソリューション(バンガード・ターゲット・リタイアメント・ファンドなど)で使用する資産配分を決定するグループのメンバーです。このグループは、富裕層顧客や機関投資家に投資助言を行う際に用いる投資手法の管理と強化も行います。ドナルドはバンガードで複数の調査レポートを執筆しています。ファーマン大学で学士号を取得。CFA協会認定証券アナリスト資格(CFA) 保持者。1991年より金融サービス業界に従事しています。

CFA協会認定証券アナリスト®およびCFA®はCFA協会の登録商標です。



ご留意事項

  • バンガードのファンドについて詳しくお知りになりたい場合はvanguardjapan.co.jpをご覧ください。ファンドの投資目的、リスク、費用、経費、およびその他の重要な情報は、目論見書に記載されています。投資前によくお読みになり、ご検討ください。
  • バンガードETFにおける受益証券の設定または交換は、通常数百万ドル単位のクリエーション・ユニット(原資産バスケットおよび現金)の引き渡しによってのみ行われます。投資家は、流通市場においてバンガードETFの受益証券の売買を行い、証券取引口座にこれらの受益証券を保有しなければなりません。その際、投資家は仲介手数料を課されます。また、ETF購入の際には基準価額を上回る金額を支払い、あるいは売却時には基準価額を下回る金額を受け取る可能性があります。
  • 債券ファンドへの投資は金利、信用、およびインフレリスクを伴います。
  • 分散投資は、利益を保証するものでも、損失を防止するものでもありません。
  • 米国以外の企業が発行した株式や債券への投資は、カントリー・リスク、地域リスク、通貨リスクなどのリスクを伴います。新興国市場を基盤とする企業の株式は、国と地域の政治リスク、経済リスク、為替変動リスクを伴います。これらのリスクは特に新興国市場で高くなります。
  • すべての投資にはリスクが伴い、投資元金を割り込む可能性があります。
  • バンガード・マーケティング・コーポレーション、バンガード・ファンドの販売会社

 印刷